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大阪高等裁判所 平成元年(う)36号 判決 1990年6月28日

主文

原判決を破棄する。

被告人を懲役三年六月に処する。

原審における未決勾留日数中三七〇日を右刑に算入する。

理由

本件控訴の趣意は、検察官渡邉悟朗作成の控訴趣意書に、これに対する答弁は弁護人中村雅行作成の答弁書に、それぞれ記載のとおりであるから、これらを引用する。

論旨は、要するに、原判決は、強盗致傷の共同正犯の公訴事実に対し、被告人には原判示乙川二郎こと乙(以下、乙という。)及び同丙沢三郎(以下、丙沢という。)との間に強盗の共謀共同正犯としての謀議及強盗の実行行為ともに認めがたいとして、強盗致傷の訴因を排斥したうえ、強盗致傷の幇助の事実を認定しているが、被告人においては、(1) 乙と事前に強盗の共謀を遂げて具体的な準備行為をしていること、しかも、(2) 犯行現場でも自ら被害者の丁四郎(以下、丁という。)に暴行を加える実行行為に及んだことが明白に認められ、優に強盗致傷の共同正犯の訴因を認定できるのに、これを消極に解して強盗致傷の幇助犯を認定した原判決は、証拠の取捨選択ないし価値判断を誤った結果、事実誤認をしたものといわざるを得ず、その誤りが判決に影響を及ぼすことが明らかであるので、破棄を免れない、というのである。

そこで、所論と答弁にかんがみ記録を調査し、当審における事実取調べの結果をも併せて検討するに、原判決挙示の関係各証拠及び当審における事実取調べの結果を総合考慮すると、結局、後述認定の限度で被告人に対する強盗致傷の罪責を肯認することができるから、強盗致傷の幇助と認定した原判決は事実を誤認したものであり、右誤認が判決に影響を及ぼすことは明らかであるから、原判決は破棄を免れない。以下、詳述する。

一  事前の共謀について

所論はまず、被告人が乙と事前に強盗の共謀を遂げた旨主張するので、検討すると、関係各証拠によれば、原判決の説示する「(共同正犯の訴因に対し幇助犯を認定した理由)」二の(一)ないし(六)記載の各事実が認められるほかに、乙が被告人に対し依頼の理由や具体的な犯行内容について明確に話さなかったにしても、被告人は自己が掘る穴の目的が被害者を脅すのに使うためであることを理解していたこと、乙が事前に被告人に対し本件犯行に加担する見返りとして報酬を与える旨話していたことの事実も認められる。もっとも、右報酬金額が三〇〇万円という高額であったかどうかの点については、原審及び当審の証人乙の証言によっても明確ではなく、関係証拠によれば、所論指摘の犯行後現場で乙が被告人と丙沢に対し「金額も減ったし、お前らの取り分も減るけど、それは現金が手に入ってから連絡する。」といった事実が認められるにしても、右の点を肯認するに足りない。所論は、強盗という犯罪の性格上、彼我の人数関係が重要な意味合いを持つところ、このことを乙は十分に認識したうえ実行行為者の一人として被告人を想定していたと主張する。なるほど、乙も原審の第四回公判廷で「相手の人数について被告人から聞かれて、二人ぐらいじゃないかと答えた」旨証言しており、乙の当初の目論見は右所論のとおりであったとも窺われ、また、後述のとおり犯行現場での被告人の行為が認定できるにしても、これをもって、本件犯行現場に至る以前の段階で、被告人が犯行現場で実行行為に加わることが予定されていたとまで積極的に認定することはできない。

以上の事実関係を総合検討すると、原判決説示のように被告人が犯行内容について格別関心を示していなかったとか、本件犯行の成功、不成功等について格別の関心を有していなかったとまで認定することはできないが、他面、所論指摘のように被告人が乙から本件犯行の具体的内容を了知したうえで右犯行の計画及びその準備に意欲的、積極的に関与したということもできないのであって、事前の段階では、被告人は穴掘りと自動車の運転・投棄を依頼され、これのみ引受け、乙としても丙沢をして被害者に対する暴行・脅迫を加えることを期待し、被告人にその役割を期待していなかったものと認めるのが相当であり、このことに照らしてみると、所論指摘のように被告人と乙との間に強盗の事前共謀が成立していたということはできないから、所論は採用できない。

二  被告人の実行行為について

次に、所論は、被告人は本件犯行現場において、(1) 乙の合図により待ち伏せしていた車内から丙沢と一緒に飛び出したうえ、逃走しようとする丁及び原判示戊五郎(以下、戊という。)を追跡し、付近堤防斜面に転倒した丁に対して丙沢と共に暴行を加え、竹藪入口まで連行するなどの被害者に対する反抗抑圧行為を行ったり、(2) 金品物色行為や見張り行為を行ったり、(3) また、被告の存在自体が被害者の畏怖心の形成に大きく作用していたことも認められるので、被告人が強盗の実行行為に及んでいることは明白である、というのである。

そこで、検討すると、

1  関係各証拠によると、被告人は、(1) 犯行現場に駐車中の自動車車内で、丙沢と共に待機していたところ、被告人の司法警察員に対する昭和六二年一一月一三日付供述調書によれば、丙沢から「穴掘ったんでっしゃろう。何人くらい来るのやろう。」などと話かけられたりしていたこと、(2) 犯行日の午後零時四〇分ころ、同所に、丁が運転し、同人に取引資金を融資した○○建設株式会社の総務部長の戊、原判示鈴木六郎(以下、鈴木という。)及び乙が同乗する普通乗用自動車(ベンツ)が被告人らの乗る自動車近くに駐車したとき、前記被告人の供述調書によれば、右ベンツを見て、これからえらいことが起こるなあと思うと胸がドキドキしたと述べており、また、原審の公判廷で、乙のほかに相手方三人が右車から下車してきたので相手が三人と判り、「私としては車の運転だけだったので、ひょっとして、出なあかんのと違うかなと不安な気持ちで一杯でした。」と述べていて、自ら車外に出て乙に加勢する必要があるかと相当思案して緊張していたことが窺われること、(3) 乙の合図をみて丙沢が車外に出たころ、被告人も車から飛び出した経緯について、被告人は、原審の公判廷で「乙が手招きをしたので丙沢が車から下りたが、不安な気持ちで、手伝いをしようという気持ちにもなりきれなかったし、車に残ってようかと、どっちつかずの気持ちやったんです。」「思わず出てしまったんです。」と、また、捜査段階でも(被告人の昭和六二年一一月一三日付司法警察員に対する、また、同月一八日付検察官に対する各供述調書)「相手が三人いたので、乙がその男らを脅して金を奪う手伝いをするつもりで車から下りた」旨それぞれ述べているのであって、右各供述は被告人が現場で乙らの犯行に加担することを決心して実行に移していった心理、行動の経過を如実に物語っているものであって十分信用できることの各事実が認められる。

2  関係各証拠によれば、乙がやにわに丁に対し「静かにせい。逃げたら撃つぞ。」などと怒鳴りながら、所携のモデルガンを真正けん銃の如く装って示して脅迫したので、同人は驚いて付近堤防斜面上の方に逃げ出したところ、(1) 証人丁の当審及び原審での証言によれば、丁は、無関係と思っていた車から二人の男が来たことを至近距離に至って気付いたこと、そのうちの一人の丙沢に押されて転倒し、同人に馬乗りになられ、ナイフを示されて「静かにせい。殺す。」などと脅されたこと、そのころ、もう一人の被告人が丁の腰から下を重点的に足蹴りしながら「黙れ」などと言っていたこと、その後、乙が「こっち、連れて来い。」と指示したので、丙沢が馬乗りをやめ、竹藪の入口あたりまで丁は連れていかれたことの各事実が認められる。この点、原判決は、右ほぼ同旨の原審の証人丁の証言について信用できない旨説示しているが、なるほど、丁は、捜査段階(同人の司法巡査に対する昭和六二年一〇月二二日付供述調書謄本)で「二人の男のうちどちらの男に足蹴りされたかは、当時、あまりの恐怖で相手の顔等見ているひまはなかったのでわからない」旨述べ、また、原審の公判廷でも「丙沢と被告人のどちらに殴られたり、蹴られたりしたかは、興奮していたこともあって、わからない」旨述べている。しかしながら、丁は、捜査段階(同人の司法警察員に対する同年一一月一九日供述調書)で「丙沢が丁の上に馬乗りになった」旨述べ、また、原審の公判廷で、二人の男がどんなことをしたのかの質問に対し「はじめ気付いたとき、蹴られ、仰向けに倒れたうえ、ナイフを持った丙沢に馬乗りになられ、そのとき被告人から蹴られたと思う」旨証言し、当審の公判廷でも、この点前記のとおり明確に証言しているうえ、原審の証言直前に証人控室で被告人の親らと会って興奮していたため右証言時、冷静に証言できなかったことや自分も被告人と同じ国の人間なので被告人を殊更罪に陥れたくないとも証言し、しかも、右当審の証言は思い違いなどではないと断言していることのほかに後述の他の証人の証言などに照らしても、前示の証人丁の証言は十分に信用できるといえる。(2) 前記被告人の丁に対する加害等の状況について、現場にいた証人鈴木は、原審の公判廷で、乙が「捕まえ。」とか指示をしたとき、二人(丙沢及び被告人)が丁を追い掛けたこと、丁が覆いかぶせられるように捕まえられたこと、丁が同証人らのいる車の方に連れてこられたことを証言しており、右証言によれば、被告人も丁の方向に行動していることは少なくとも明らかである。もっとも、右証言中には、丁を捕まえるため同人を蹴っていたかは気が動転していたこともあってわからなかった旨の証言部分があり、この点、原判決は「果たして鈴木が当時の具体的な状況を正確に記憶していたのかどうか疑わしいといわざるを得ない」と説示するが、しかしながら、鈴木は、丙沢と以前から面識があって、右「二人」というのは丙沢のほかは被告人であることを証言しているのであって、当時の状況、同証人の立場等に照らし、現場の状況を具体的、詳細に記憶していることは困難であるとしても、前記はじめの証言部分も原判決のように信用することができないと否定されるべきではない。また、丁と共に逃げ出した証人戊も、当審及び原審の公判廷で、逃げるのをやめたのち、激しく抵抗していた丁が被告人から蹴られるなどしていたのを目撃していた旨証言しているのであって、なるほど、同証人の証言中には、被告人が丁に対しナイフ様の物を振りかざして蹴ったりしていたとか、他の証拠に照らして矛盾している部分もあるが、犯行当時の状況等に照らし、右矛盾点を殊更同証言の重要部分のごとくみる原判決の認定は首肯し難い。なお、原判決指摘のとおり、原審の証人丙沢の証言中には、被告人が丁を追い掛けたり同人に手をだしたりしたという記憶がない旨の、また、原審の証人乙の証言中にも、被告人が丁の方へ向かって行ったことはないと思う旨の各証言部分があるが、しかしながら、証人丙沢は、自分の丁への加害行為についてすら、馬乗りしたり蹴ったりしていない旨証言し、かつ、関係証拠によれば、丙沢は右証言当時、既に本件について強盗致傷の送致事実に対し「傷害」と認定されたうえ、特別少年院に収容されていた状況下にあったことや前示認定事実などに照らしてみると、その証言の信用性を肯定し難く、また、乙は、関係証拠によれば、現場から離れた直後ころ、被告人らに対し「わしがやったことやから、お前らには関係ないことや、捕まってもわしだけが懲役に行ったらええ」などと話している事実が認められ、当審の証人乙の証言によれば「丁が逃げたとき、被告人に捕まえてもらうことを全く期待しないといえば嘘になるし、被告人に対しすまないと思っているし、被告人を庇ってやりたい気持ちがないといえば嘘になる」旨証言していることや前示認定事実などに照らしてみると、同人の前記証言部分の信用性も肯認し難い。

3  ところで、原判決は「被告人は乙が鈴木に後ろから押さえ込まれてもみ合っているようにみえたので、乙から鈴木を引き離すため、自動車から降りて右両名の傍まで行き、その間に割って入ってが、ほぼ同時に鈴木が乙から手を放した」と認定し、被告人も、当審及び原審の公判廷で「丁が逃げ出し同人を丙沢が追い掛けたのち、乙が鈴木に羽交い締めに合ったのを目撃して車から飛び出し、丁の方には行かず、鈴木らの方に小走りで向かい、鈴木に『やめて下さい。』と言って両手を広げるようにして両人の間に入ったら、簡単に二人は離れたが、そのころ、丙沢が丁を連れて来るのを、乙らの側に立ってぼさっと見ていた」旨弁解するが、証人鈴木は、被告人に止めに入られたことはない旨、また、証人乙も同旨の各証言をしていること、前述のとおり被告人は乙に加勢しようとしたことや被告人も捜査段階(司法警察員に対する昭和六二年一一月一三日付供述調書)で、「丙沢が丁を乙のいる方に連れて行くとき被告人もその後ろをついて行った際、鈴木が乙に抱きつき同人を宥めたが、乙が『放さんか。』と言ったので、放させた」旨供述していることとも前記被告人の公判廷の弁解は矛盾し、いささか不合理、不自然な内容であることなどに徴すると、右弁解は措信できず、前記原判決認定も肯認し難い。

4  以上の事実関係等を総合考慮すると、少なくとも、被告人において、犯行現場で、丁に対し足蹴りする暴行を加えた事実は明らかであるうえ、所論指摘のとおり強盗という犯罪の性格上、彼我の人数が重要な意味合いを持ち、共同正犯たるべき実行行為の有無は二人以上の行為を全体として観察評価すべきであって、個々の行為のみを切断して観察すべきではないと考えられるところ、証人丁は、当審で「三人みんな恐かった。一人でも欠けたらそんな目に合わなかったと思う。二人が車から出て来たが、一人ならナイフ振りかざされてもなんぼか抵抗しよういう気ありますやん。三人グループ(同証人、鈴木、戊)やと思うとるから、乙ともう一人やったら、抵抗する気があります。」旨証言していること、被告人も、前示のとおり原審の公判廷で、相手の人数が三人なので自分一人が車に乗っているわけにいかなかった旨、また、捜査段階(前記司法警察員に対する昭和六二年一一月一三日付供述調書)でも「自分が一番体格がよかったので、相手がビビリ、乙の手助けになると思って車から下りた」旨それぞれ述べていることのほか、当時の現場の状況などの諸事実に徴すると、被告人が車から飛び出し被害者らの前に現われたこと自体も強盗の手段たる行為の一つと評価できる。さらに、関係各証拠によれば、その後も、被告人において、乙及び丙沢が右丁、戊及び鈴木を同所付近竹藪内小道に連れ込む際、乙らと共に竹藪の中に入ろうとしたり、これを乙に止められ、前記自分の乗ってきた自動車内で待機し、乙が一時、右竹藪の中から出てきて物色のためベンツのトランクを開けようとした際に手助けしたり、乙らの犯行が終わったのち乙や丙沢と一緒に右車で現場から引き上げて犯行に供した物などを乙の指示で投棄したりしている事実も認められる。

以上の次第であって、これらの事実関係を総合考慮すると、結局、被告人は、現場での共謀のうえ乙らと共同実行の意思をもって、強盗の共同実行をなしたものというべきであり、したがって、被告人の現場における強盗の実行行為を否定した原判決の認定には事実誤認のかどがあり、その誤りが判決に影響を及ぼすことが明らかである。論旨は理由がある。

よって、量刑不当の控訴趣意について判断するまでもなく、刑訴法三九七条一項、三八二条により、原判決を破棄したうえ、同法四〇〇条但書により、さらに次のとおり判決する。

(罪となるべき事実)

被告人は、「××住建」の名称で不動産業を営んでいた乙の下で働いていたことがあったが、乙において情を知らない同業者の鈴木を通じて同業者である丁(当時四五歳)に架空の不動産取引の話を持ちかけ、手付金名下に現金八〇〇〇万円を持参させてこれを強取しようと企て、昭和六二年九月二四日ころ、大阪府高槻市<住所略>の小料理店「△△」において、同人から「ええ、金儲けがあるんや。」などと言って話を持ちかけられ、同人が悪いことを企てていると思い「やばい仕事はいやです。」と答えたものの、同人から「お前には迷惑をかけない。」「大阪空港知ってるか。今度、連れて行ってやるから、車を一台駐車場に止めてほしい。穴を掘ってくれんか。」などと言って頼まれ、同人が不動産取引に絡んで金を持ってきた者を脅して金を奪う企てを持っており、その実行のため右穴を掘ったり、相手が乗ってきた車を空港に捨てたりする役割を担当させられることを察知しながら、そのころ、右役割担当を承諾し、その後、同人と共に大阪空港まで下見に行き、同月二九日午前一時ころ同人からの電話連絡で「大山崎のダイハツの裏の土地知ってるか。そこらへんで見つからないように適当な所に穴を掘っといてくれ。深さはお前の身長くらいでいい。お前の掘り易いように掘ってくれ。」などと指示を受けて、同日、京都府乙訓郡大山崎町字下植野小字北畑地一番ダイハツ株式会社京都工場南側の桂川右岸河川敷の竹藪内に直径約一・五メートル、深さ約二メートルの穴を掘り、同年一〇月二日午前一時ころ乙からの電話連絡で「午前一一時にJR向日町駅に人を迎えに行ってくれ。現場に行って堤防の入口付近で待機してくれ。」などと指示され、同日の右時刻ころ、右駅から普通乗用自動車に丙沢を同乗させ、前記河川敷に赴き、同所に右自動車を停めて同車内で待機していたところ、同日午後零時四〇分ころ、同所に、丁が運転し、戊、鈴木及び乙が同乗する普通乗用自動車が来て、前記被告人らの乗る自動車近くに停車し、乙が丁らに取引物件をみせるかのように話して同人らを下車させたうえ、被告人及び丙沢の乗る自動車に向かって合図して下車を促した。このころに至って、被告人は、相手方が三名であることも手伝って、乙らの犯行への加担意思を固め、同人らとの間で暗に金品強取の共謀を遂げ、乙において、やにわに丁に対し「静かにせい。逃げたら撃つぞ。」などと怒鳴りながら、所携のモデルガンを真正けん銃の如く装って示して脅迫し、右乙の合図を見て下車した丙沢において、驚いて付近堤防斜面上の方に逃げ出した丁を追い掛け、同人に対し所携の刃体の長さ約一〇センチメートルの果物ナイフ一本を示して脅迫し、右丙沢に続いて下車した被告人においても、右丁を追いかけ、丙沢が丁の身体に馬乗りになっている際、丁の下半身あたりを足蹴りする暴行を加え、その後、丙沢らにおいて、右丁、戊及び鈴木を同所付近竹藪内小道に連れ込んだうえ、同人らの目、口、手首などにそれぞれガムテープを巻き付けて緊縛し、同人らのズボン、靴、靴下などを脱がせたり、これを免れようとした丁の腹部を足蹴りしたり、裸足のままその場から逃走した丁を追い掛けて連れ出したりする暴行を加え、丁の反抗を抑圧して、同人から同人が前記手付金に充てるため持参していた交野市農業協同組合長理事南田太郎振出名義の額面四〇〇〇万円の小切手二通の内一通を強取し、その際、丁に対し、右暴行やその機会における同人の右逃走行為により、加療約二週間を要する頭部・胸部・左肢股関節部打撲傷、右膝下腿・左大腿足関節部・左第四趾挫創の傷害を負わせたものである。

(証拠の標目)<省略>

(法令の適用)

被告人の判示所為は、刑法六〇条、二四〇条前段に該当するところ、所定刑中有期懲役刑を選択し、犯情を考慮し、同法六六条、七一条、六八条三号を適用して酌量減軽をした刑期の範囲内で、被告人を懲役三年六月に処し、同法二一条を適用して原審における未決勾留日数中三七〇日を右刑に算入し、当審及び原審における訴訟費用については刑訴法一八一条一項但書を適用して被告人に負担させないこととする。

(裁判長裁判官 右川亮平 裁判官 阿部功 裁判官 山本哲一)

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